独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する

 当直を代わってもらう時みたいな軽い返事だが、承諾してもらえてホッとする。

「ありがとうございます……!」
「いや、こちらこそ感謝だよ。オペフェチの変態医師の妻になってくれる女性がいるなんて」
「もしかして、さっきの根に持ってます?」
「いや、全然。むしろ、愛花先生が奥さんってなんか面白そう」

 面白いとは失礼な。でもなんにせよ、これで父と祖父を黙らせることができる。彼女にフラれた傷心の颯が変に罪悪感を覚えることもないだろう。

「では、詳細はまた後日詰めましょう。とりあえず、オペ記録を仕上げたいので」
「ああ、俺もまだ帰らないから、なんかわかんないところあったら聞いて。愛花先生の位置からは見づらかった部分の解剖図も手伝う」
「はい、よろしくお願いします」

 私たちはお互いに再び背中を向け、自分の仕事に戻る。

 まるで結婚の約束をしたとは思えない、素っ気ないシチュエーション。

 しかし、それをなんとも思っていなさそうな小田切先生となら、気楽にうまくやっていけそうな気がした。

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