独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する

 結婚式を終え、秋も深まってきた十一月の初旬。私は仕事の合間に、小田切総合病院の産婦人科を受診した。

 尿検査を済ませた後、医者であってもちょっと抵抗のある内診台に上がり、さっそく診察される。

「あらまぁ早乙女先生。倍おめでたいわ」

 カーテンの向こうにいるベテランの産婦人科医の先生が、弾んだ声をあげる。その理由は、私にもすぐにわかった。内診台からも見えるエコー画面に、くっきりふたつの胎嚢が映っていたのだ。

「これって……もしかして」
「ええ。二卵性の双子ちゃんね。小田切先生喜ぶんじゃない?」

 先生はうきうきと声を弾ませるが、私は喜びより驚きの方が大きかった。

 妊娠は夫婦で望んだことだし、先月生理が止まり、この頃は軽いつわりの症状があったので、そうだろうなとは思っていたけれど……まさかの双子とは。

 街中で見かけたりするぶんにはかわいいが、その子育ては壮絶だと聞く。

 純也は忙しいから頼れないし……実家の男衆も、一番頼れる存在だった颯は美波ちゃんと籍を入れて家を出てしまったしな……。

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