独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する
ぐるぐる思い悩みながら脳外の医局に戻ると、純也と蓮見先生、それに一昨年からこの医局に入った丸尾先生が、なにやら肩を寄せ合って雑談していた。
「これが一歳半の息子。歩き始めて危なっかしいんだわ」
「こっちも見てよ。依子に似て美人だろ? 将来嫁に出すと思うと今から憂鬱になるね」
どうやら私物のスマホで写真を見せ合っているようだ。ラグビー選手のような体つきの丸尾先生は、なんと三児の父。そして、昨年黒瀬さんと結婚した蓮見先生にも、生まれたばかりの赤ちゃんがいるのだ。
「……うちも頑張ってはいるんだけどなぁ」
子持ちのドクターふたりに挟まれて、ふと、純也が寂しそうにつぶやいた。
実は、彼には妊娠の事実をまだ明かしてはいない。今日の診察で赤ちゃんの心拍などがきちんと確認できてから報告しようと思っていたのだ。
「焦るなよ。意外と簡単にできるものじゃないんだ」
「ま、ウチはすぐできたけどね」
せっかく丸尾先生が励ましたのに、蓮見先生が口を挟んだせいでますます純也が肩を落とす。
純也って、そんなに子どもが欲しいと思ってくれてたんだ……。私にプレッシャーをかけないためなのか家ではあまり態度に出さないので、落ち込む姿を見るのは初めてだった。