独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する
そうだよね、驚くよね……。医者同士の共働きで育てるの、不安だよね……。
複雑であろう彼の胸中を想像し、思わず視線を落とした瞬間だった。純也がさっきよりも勢いよく抱きついてきて、破顔する。
「いきなりふたりも家族が増えるの? ちょっとうれしすぎるって、それ」
予想外の反応に、私は戸惑いながら尋ねる。
「純也……不安じゃないの?」
「不安? まぁ、なくはないけど……それよりも、俺と愛花の子が一気にふたりも来てくれてたことに感激してる。愛花は体調の変化もあって大変だと思うけど、俺、支えるから。気負いすぎないで、ゆっくりパパとママになっていこう?」
純也は優しく微笑み、お腹に置いた私の手に、そっと自分の手を重ねた。
外科医である私たちの手に、結婚指輪はない。挙式で儀式的に交換はしたが、それ以来大事にしまい込んだままなのだ。
けれど、お互いの心の中には目に見えない絆がきちんとある。ケンカやすれ違い、そして命に係わる病すら乗り越えて、固く結ばれた夫婦の絆が。