独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する
私、早乙女愛花は、東京都品川区にある小田切総合病院の脳神経外科で、専門医の認定を取るべく研修中の、二十八歳。
昔からとにかく脳外科医になりたくて必死で、小学生の頃から『ガリ勉』と言われていた。
しかし、そんな低俗なからかいに構っている暇はなかった。なぜなら私は、母と祖母を同じ脳の疾患で亡くしていて、とにかくその病が憎かったのだ。
だから、外野の余計な意見には完全無視を貫き、中学に入った頃には教室で解剖生理の専門書を開き、周囲を気味悪がらせていた。
その頃からずっとかわいげとか女子っぽさみたいなものには無縁で、大人になった現在も、化粧や服装には無頓着。
伸ばしっぱなしの黒髪は半年にいっぺんくらい美容師の弟に切ってもらうけど、基本は適当に一本結びにしただけの髪型。
服装はパンツスタイルが多く、休日に至ってはほぼスウェット上下で過ごす。当然、恋愛経験なんて皆無だ。
こんな私の名前が〝早乙女愛花〟だなんて、似合わなすぎる。