独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する
一応頷いてみるが、それ以上の感想は特にない。もちろん、彼のオペによって患者さんのQOLが向上したのは喜ばしいけれど。
そんな冷めた思いでいた私に、小田切先生が身を屈めてコソッと耳打ちする。
「俺たちも早く籍入れないとね?」
吐息交じりの甘い声。急に親密な雰囲気を出され、胸が騒がしくなる。
「あの、あまり不用意に接近しないでください……! さっきも言いましたが、病院では私たちの関係は絶対に秘密なんですから!」
「はーい」
不満げに口を尖らせ、間延びした返事をする小田切先生。叱られたのに全然反省していない子どものようだ。
まったく、本当にわかってるのかな……。バレた時、ナースの殺気が向けられるのは全部こっちなんですからね?
胸に一抹の不安を覚えつつも、そんなことより仕事仕事、と頭を切り替えて医局に戻った。
私にとって衝撃の事実が発覚したのは、その後。脳外のドクターとナースで、現在担当している患者についての情報共有をするミーティングでのことだった。
今日の外来で入院することが決まったある患者について、蓮見先生が報告する。