独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する
――ピピッ、ピピッ。
無機質な電子音で、目が覚める。
今日も仕事だ。起きなきゃ。ガバッと上体を起こし、目もとを擦る。
視界に映るのは、真っ白な壁、シンプルな黒いデスク、パソコン、プリンター、医学書の詰まった背の高い本棚といった、見慣れない家具たち。それにこのベッドも布団も、私のじゃない……?
ぼんやりそう思っていると、間近から男性の甘い声がして。
「おはよ、愛花先生」
「……ぎゃっ!」
思わず蛙を踏んづけたような声を出し、ベッドから転がり落ちる。
「大丈夫? 寝ぼけてるの?」
そう言って手を差し伸べてくれるのは、Tシャツにスウェットというラフな格好の小田切先生だ。私は彼の手を握って立ち上がり、一旦ベッドに腰掛けて頭に手をあてた。
隣に座った小田切先生が、そっと顔を覗き込んでくる。
えっと、そっか……。私、昨夜彼の部屋に泊まったんだった。でも、なんで隣で寝てるんだっけ……?
必死で頭を回転させ、記憶の糸を手繰り寄せる。