独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する
「颯、俺ならまだいけるよな? な?」
「はぁ? こん中であの女優と付き合える可能性あんの、俺だけだかんな」
こいつら、なんというアホな会話を交わしているのか……。
私は戸口に立ったまま、低い声で「アンタもないわ」と呟いた。
テレビに夢中だった三人の顔が、そろってこちらを向く。
「あ、おかえり、姉ちゃん」
一番に反応した颯に続いて、父と祖父も「おかえり」と声を掛けてくる。しかし、またふたりはまたすぐテレビに向き直り、ドラマに集中し始めた。
颯だけが立ち上がり、疲れた顔の私を気遣う。
「姉ちゃん、メシは?」
「病院で食べてきた。お煎餅一枚」
……って言っても、十七時くらいだったと思うけど。
「それ食べたって言わねーし。肉屋のメンチ、一個残ってるよ」
「あー、じゃあもらう。ご飯ある?」
「冷凍なら。チンする?」
「お願い」
ふたりで小さなダイニングキッチンに移動し、私は冷蔵庫から牛乳を取り出す。そして腰に手をあてると、パックに口をつけてごくごくと一気飲みした。