独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する

 たしか、彼が頼んでくれた中華の食事がとても美味しくて、緊張も警戒心も緩んできたところで、『明日も朝早いんだし泊まっていけば?』と誘われたのだ。

 最初はもちろん遠慮したのだが、『泊まるならオペの極意を教えてあげる』という文句につられ、承諾。

 家族にはバレると面倒なので、『病院に泊まる』と連絡した。嘘も方便である。

 シャワーを借り、パジャマ代わりに渡された彼のプルオーバーのパーカーを着ると、丈が短めのワンピースを着たような具合だった。私は普段スカートを穿かないので、足がスース―して落ち着かない。

 リビングに戻ってソファに座るときも、人の服だからよくないと思いつつ、太股を隠したくてつい裾を引っ張って伸ばしたり。

 そんな私を隣でしげしげと観察していた彼は言った。

『俺の服着ると、愛花先生ってそんな小っちゃかったんだって思うね』
『小田切先生、身長何センチですか?』
『一八三』
『じゃ、三十センチも違います』
『ホント? 愛花先生って、白衣着てる時は堂々としてるから、もっと大きいと思ってたよ』

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