独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する
「……コップに注いで飲めよ」
レンジの前にいる颯に、呆れた目を向けられる。
「いいでしょ。この家で牛乳飲むの私だけなんだから」
「そういう問題じゃないと思うんだけど。……あ、ところでさぁ」
話している途中でご飯の温めが終わり、颯はそれを出してメンチカツと入れ替え、再びレンジをセットする。それから、ごくさりげない調子で言った。
「俺、美波とは別れたから」
再び牛乳パックに口をつけていた私は、ゲホッとせき込んだ。
な……なんですって⁉ 鼻から牛乳が出るところだったじゃない!
美波ちゃんというのは颯の彼女で、専門学生時代からの長い付き合いだった。颯は、美容師として一人前になったら結婚するつもりだとも言っていた。
彼女とは私も会ったことがあり、素直でかわいらしくて、いいお嫁さんになるんだろうなぁなんて思っていたのに。
「な、なんで?」
「理由は教えてくれないんだ。いくら聞いても〝別れたい〟の一点張りで……もう、こっちから折れるしかなかった」
「そうなんだ……」