独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する
「よし。俺も頑張ろっかな」
静かな医局でひとりごち、俺は彼女の椅子の背もたれにかかっていたチェック柄のブランケットを広げて肩にかけてやると、自分のデスクに向かった。
*
コーヒーの匂いで目が覚めた。目を瞬かせながら窓の方を向くと、ブラインドの隙間から薄っすら明るい光が漏れている。
「何時……?」と声を漏らして壁の時計を見る。
五時四十六分。まだ早いな……。
気怠い体をめいっぱい伸ばすと、肩からぱさりとなにかが床に落ちた。見覚えのある、チェック柄のブランケット。
あれ? これ、昨夜俺が愛花先生に掛けてあげたやつじゃ……。
「おはようございます」
ブランケットを拾い上げてぼんやり記憶を辿っていると、彼女の声とともに、デスクにコトリと湯気の立つマグカップが置かれた。
顔を上げると、職員用のシャワー室に行ってきたのか、半乾きの髪にさっぱりとメイクを落とした顔の愛花先生がそこにいた。とはいえいつもメイクの薄い彼女なので、かわいさに変化はないのだが。