独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する
「こうなったらもう、蓮見先生に完璧なオペをしてもらって、ちゃんと治ったって本人に実感してもらうしかないね。病気の時は誰しも心が弱くなるから、まずは体を治して、それから颯くんとのこと、もう一度考えてもらうのがいいんじゃないかな」
暗い顔で俯く愛花先生にそう告げると、彼女は背筋を伸ばしてしっかり前を見据え、唇をきゅっと引き締めた。
「それしかない、ですね。私も、助手として足を引っ張らないようにしないと」
愛花先生の胸にも不安はあるだろう。しかし、医者として覚悟を決めた眼差しだ。
ようやくいつもの彼女が戻ってきた。そんなふうに思って、ホッとする。
「ねえ、愛花先生」
その凛とした横顔も。落ち込んだ憂い顔も。キスした時の蕩ける顔も……全部俺のものなんだって、証拠が欲しい。たとえ職場では明かせなくても、きみとの関係に、確かな名前が欲しい。
「なんですか?」
こちらを向いて首を傾げる彼女に、俺はにっこり微笑んで告げた。
「今日、これから一緒に、婚姻届を出しに行かない?」