独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する

 準備だけは整っていたが、具体的にいつ提出するか決めていなかった。

 今日は特別な日でもなんでもないし、大安かどうかも知らない。でも、こうして一緒に過ごせる休日なんてそう多くはないだろうし、少しずつきみの心が近づいてきた今、出すべきだと思うんだ。

 俺は緊張しながら、彼女の返事を待つ。顔には出さないが、鼓動がせわしなく俺の胸を叩く。

 愛花先生はすぐにはなにも言わず、俺のデスクの上にある卓上カレンダーをじっと見つめた。それから俺の方を向き、かしこまった態度で言う。

「わかりました。今日、四月三日が、一応私たちの結婚記念日……ということですね」
「うん。よろしく、改めて」
「……いえ。こちらこそ」

 ふたりで同時に頭を下げ、それから顔を上げるタイミングも同時で、目が合った瞬間、どちらからともなく笑いがこぼれた。

 そういえば、最初に結婚の約束をしたのも、この医局だったっけ。

 シチュエーションは相変わらずロマンティックでもなんでもないが、きっと、彼女も俺も、あの時とは違う気持ちを抱いているだろう。

 今はまだ、彼女より俺の方がずっと大きいのかもしれないけれど。

 これから、一緒の大きさになるように、努力しよう。ふたりで。

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