独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する

 でも、母が亡くなってしまうと、自然とそういう服を着なくなった。勉強に打ち込むのに、リボンもレースも邪魔なだけだったから。

「だったら余計に、母さんは娘の晴れ姿見たいはずじゃん? 実は服も用意してるからさ、髪とメイク終わったら着替えてみて」
「えっ? なんでそこまで……」

 問いかけながら、思わず颯の方を振り向いた瞬間だった。

「俺たちみんな、愛花には幸せになってほしいんだよ」
「立派な脳外科医になってもらうのと同じくらい、花のようにきれいな嫁さんになってもらうのも、わしらの夢じゃったんじゃ」

 話しながら、開けっぱなしだった居間のドアから父と祖父が入ってきて、鏡台に座る私のもとに近づいてくる。傍らで立ち止まった父は優しい眼差しでしばらく私を見つめた後、すまなそうに眉尻を下げた。

「愛花のこと、医学部を出すだけで精いっぱいで、なんの嫁入り道具も持たせられなくてごめんな。その代わりというわけではないが、お前に似合いそうなワンピース、三人でああでもないこうでもないと言いながら選んだんだ。だから、ぜひ着てほしい」

 いつになくしんみりした様子の父に、思わず胸が詰まった。

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