独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する
「そうそう。それに、あとで小田切くんが愛花に接近した時、加齢臭がしたらいかん」
居間の空気が一瞬、しーんと静まり返った。やがて引きつった顔で突っ込んだのは颯だ。
「じーちゃん……感動が台無し」
「わしは本当のことを言ったまでだ」
いつものように冗談をかます祖父のせいで、みんな涙が乾いてしまった。
もう、ホント……最後までしょうもないお祖父ちゃんなんだから。
マイペースな祖父に呆れる反面、早乙女家らしい明るいテンションで送り出してもらえた今日のこと、私は一生忘れないだろうなと思った。
鏡に映った自分は、別人のようだった。
絶対に自分じゃできない、編み込みのアップヘア。メイクのポイントは、春らしいアプリコットオレンジのアイシャドウに同系色のリップで、あまり特徴のない顔が一気に華やかになった。
その変化だけでも気恥ずかしかったのに、家族の選んだワンピースを着て彼らの前の登場するのは、さらなる羞恥プレイだった。