背中合わせからはじめましょう  ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇
 なぜか高鳴る心臓の音を気づかれないよう、デザインの資料を机の上に並べる。

 意識をなんとかデザインの説明に向ける。
 常務も感心を持って聞いているようだが、チラチラ俺の顔を見たり、ドアを気にしたりしている。

 何かがおかしい……



 ドアがノックされ、トレーにコーヒーカップを乗せた彼女が入ってきた。


 ふうー
 仕事に集中! 集中!


 常務に勧められるままコーヒーカップを口に運び、気持ちを落ち着かせようとしたのに……


 「ああ、そうそう、君たちお見合いしたんだってな?」


 常務が、表情一つ変えず何か言ったようだ。


 えっ?
 ブファッ!
 ガチャンッ!

 俺の口からコーヒーが噴き出た。
 彼女の手からは、トレーが落ちたようだ。


 俺は、慌ててポケットからハンカチを取り出した。


「常務、何故そのことを?」


 俺は、そう言うのが精一杯だ。


「何故だったかな? まあ、風の噂ってとこだ。あはははっ」


 この親父、何か知ってる……

 もう、誰も信じられない。
 そんな気がする……
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