背中合わせからはじめましょう  ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇
 パパが車を停めたのは、確かに立派なマンションの前だった。

 車から降り、スーツケースを下ろす。私は、大きなスーツケース二つを手にしているのに、父の手には、小さな紙袋がぶら下がっているだけだ。

「荷物は?」


 私の問に母は、ああ、というような顔をした。


「たくさんの荷物だから、事前に送ったのよ」

「ふーん」


 なんの疑いもなく、父と母についてマンションのエントランスに入った。父が何やら、コンシュルジュらしき人に伝えると、正面のエレベータが開いた。

 まあ、一か月ほどとは言え、こんな高級なマンションで生活できるなんてラッキーだと、少しだけ足取りが軽くなった。

 エレベーターを降り、いくつか並ぶドアの前に立つと、父がインターホンを押した。

「はーい」

 女性の軽やかな声が聞こえた。
 空いている一室を借りたって言ってたけど、引き継ぎで誰か居るのだろうか?


 間もなくしてガチャっとドアが開いた。

「お待ちしていましたのよ。どうぞ、入って下さい」


「おじゃまします」


 父と母に続いて部屋に入ると、ドアがガチャリとしまった。
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