背中合わせからはじめましょう  ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇
「いいえ。私一人御厄介になるわけにはいきませんので。ホテルもすぐ見つかりますから、両親と一緒に帰ります」

 私も、目一杯の笑みを返した途端、


「とんでもない!」

  彼の父と母が、同時に叫んだ。


「若い女性が一人でホテルなんて危険よ。部屋も美月さんように用意出来ているから、心配しないで」


 よっぽど彼と同居の方が危険だと思うが。ホテルの方が、何倍安全か……


「でも……」


 もう、どうすりゃいいのよ?


 ため息が漏れそうになったその時だ。ほとんど存在感を失っていた彼が口を開いた。


「そうは言っても、彼女もここで暮らすというのは、さすがに気を遣うのでは? 僕がどこか別の安全な所をお探ししましょうか?」


 いや、助かったぁ……


 あれ、なんか胸の奥が悲しげな音を立てたのは何故だろう?

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