背中合わせからはじめましょう  ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇
「そうそう美月さん、これはどうだね?」

 彼の父が、ワインのボトルを上げた。


「わぁー。生ハムとチーズがあったので、もう一品作りますね」

「そうか? 悪いねえ」


 彼の父は、ワインとワイングラスを持ってソファーへと移動した。
 私は、キッチンへと向かう。
 冷蔵庫から、生ハムとチーズやトマトを出す。

 すると彼が、すっと席を立ち、テーブルの上を片付け始めた。

 私がつまみを作る間に使った紙皿を袋にまとめ、洗い物までしてしまった。
 食事をしていたテーブルとキッチンは、元の通りに綺麗に片付けられた。

 まあ、私は正直片付けは嫌いなのでラッキーと胸の中で叫んだ。


 四人で今度はソファーに座って飲み始めた。彼の母は、紅茶を飲んでいるようだ。

 さすが高級な生ハムだけあって美味しい。ワインも少し辛口の口当たりがよい。
 彼の両親は見合いの時の印象と違い、気さくでとても面白い人達だった。

 彼は、ほとんど口を開かず、どちらかというと冷めた目で見ていた気がする。

 なんだかおしゃべりも弾んでしまって、どのくらい時間が経ったのだろうか?


「美月さん、こっちこっち!」

 彼の母の声に立ち上がった。
 少し、足元がふらついた。ちょっと酔ったかな?


 彼の母の手招きする方へ向かうと、扉の向こうにふかふかのベッドが広がっていた。


 うわっー
 思わず、ベッドに倒れこんだ。
 気持ちいい~~


「この部屋は、前に友梨佳が使っていたのよ。だから、遠慮せずに使ってね」


 彼の母の声が、遠くなっていく。

 バタンとドアの閉まる音が聞こえたが、身体はもう動かなかった……


「悠麻、美月さんの事くれぐれも頼んだわよ。じゃあ、帰るわね」

「お、おい……」


 そんなやり取りが聞こえたような……
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