背中合わせからはじめましょう  ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇
 目を瞑れば、その姿が勝手に目に浮かんで来る。
 見たくて見たわけじゃない!
 だけど、勝手にバスルームを使おうとドアを開けてた私が悪いよね。


「おい。シャワー空いたぞ」


 ドアの向こうから、何もなかったような落ち着いた声が聞こえてきた。

 恐る恐るドアを開けると、そこには、着替えを済ませた彼が立っていた。


「あ、あの、さっきはごめんなさい……」


 恥ずかしくて顔を上げる事が出来ず、俯いたまま謝った。


「今更なんだよ。この前、散々見ただろう?」


その言葉に、カーッと熱くなった顔を上げた。


「そういうことじゃないのよ! バカな事言わないで!」


 私は彼に背を向け、バスルームに向かった。


「えらく慌ててたけど、土曜なのに仕事?」

 私の苛立ちとは正反対の、呑気な声が背中にかけられた。


 えっ? 今日、土曜日?
 休みだよ。


 崩れそうな身体を引きずるように、バスルームのドアを開けた。


 うん?

 あーーーっ
 がーーーんっ


 私がバラまいてしまった着替えが、洗面所の台の上にきちんと畳まれていた。
 しかも、ピンクのレースのブラジャーが一番上に乗っていた。

 私は、ガタっとその場に崩れ落ちた……
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