背中合わせからはじめましょう  ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇
 シャワーを浴びさっぱりすると、思考が止まっていた頭が動き出してくる。

 まさか酔って、彼のマンションに泊まってしまうなんて……
 さすがの私も自己嫌悪に陥った。

 ここに居ちゃいけない。取り合えず今夜泊まるホテルを探さなきゃ。


 一応リビングに行ってみると、きちんと片付いたテーブルは、生活感が無くひっそりとしている。

 辺りを見回すと、パソコンを広げ彼がソファーに座っていた。


 何をどう声をかけていいかわからない……
 お礼を言うべきだとは思うけど……


 あー、でも、お腹が空いた。
 昨日、沢山の食材を買い込んであったのを思い出す。


「朝食作ってもいい?」

 私の口から出たのは、そんな言葉だった。


「ああ、俺のも作って」

「う、うん」


 勿論、作るつもりではいたが……

 キッチンに入ると、夕べ使用した物は、全て片付けられていた。

 米しかないので、急いで洗う。
 シャケがあったので焼き。卵焼き、サラダ、味噌汁ってとこだろう。


 テーブルの上に、紙皿ながらも美味しそうな朝食が並んだ。


 こういう時、どうやって声をかけたらいいのだろうか?

 明るい声で『ご飯ですよ~』と、言うのも違う気がする。
『お食事の用意が出来ました』と改まって言うのもどうなんだろうか?
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