背中合わせからはじめましょう  ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇
ホテルのエントランスを抜けると、向こうから康介さんが近づいてくるのが見えた。

「久しぶりだね。悠麻君」


 康介さんは、人懐っこい笑みを向けた。


「お久しぶりです」


「本当に、相変わらずカッコいいよな」


 康介さんは満足そうに俺を見た。

 俺は、この場に及んでもまだ、見合いを断る口実がないかと頭の中を駆け巡らせていた。


「でしょ? 見た目は完璧なんだから!」

 姉ちゃんが自慢げに、俺の背中を叩いた。


「本当に。相手の方も気に入るよ」


「いやいやこんな俺じゃ…… 康介さんの顔に泥を塗る事になるかもしれないんで…… 俺にはもったいないかと……」

  

「まだそんな事言ってるの?」


 後ろからの声に、嫌な予感がして振り向くと、これでもかというくらい着飾った母が立っていた。


 逃げたい……
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