背中合わせからはじめましょう  ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇
生活と心…… 美月
「湯之原さん! もう、見ちゃいましたよ」

「はい?」


 誰かに声をかけられたような気がして声を上げた。

「ええ! どうしたんですか? 顔…… お疲れですか?」


「ああ…… 河合さん、おはよう」


 夕べは、あれからマンションに戻ったのだが……
 当然、腹も立つが何ともいえない切ない気持ちが交互にやってきて、結局一睡も出来なかった。

 彼は、約束と通り、手を出すような事はしてこなかった。
 私も、約束通り、朝食を作った。


「おはようございます。何かあったんですか?」


 マジマジと顔を伺ってる河合さんを見て、やっとここが会社だと気付いた。


「おはよう」

「ちょっと、さっき、あいさつしたじゃないですか?」


「ああ。ごめんなさい、ぼーっとしていたみたい」

「もう。珍しく顔に張りが無いですよ? 彼氏と何かあったんですか?」

「ひぇ?」

 頭の中のどこかに刺さったようで、変な声が出てしまった。


「えっ? 図星ですか? 昨日は、あんなに仲良く買い物していのに?」

 カチャリン……

 持っていたボールペンが手から落ちた。

「何の事?」


 すっとぼけるつもりじゃない、何を見られたのか頭の中の整理がつかないのだ。


「とぼけてもだめですよ。先月オープンしたスーパーで、男の人とイカ選んでたじゃないですか? イカ選ぶなんて、ただならぬ関係じゃなって、すぐ分かりましたよ」


 まさか誰かにみられていたなんて、思ってもみなかった。


「そ、そんな、関係じゃないわよ」


 じゃあ、どんな関係と聞かれても、困るが……


「そうですか? 新婚さんかと思っちゃいましたよ。キザキ家具の方ですよね? この間来社した」


 ええっー!! そこまで面が割れてしまったのか……

 体の中から、何かが抜けていくようだ……
 このまま、帰ってしまいたい。

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