背中合わせからはじめましょう  ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇
 彼が、自分の部屋に戻っている間に、自分の下着だけでも畳まなきゃと思うが、両手が卵とパン粉でベトベトだ。


 やっぱり、寝室から戻った彼は、洗濯物を畳み出した。

 はあー。間に合わなかった。

 そして、私の服も下着も綺麗にクローゼットに収められた。




 お風呂から出てきた彼と夕食を囲む。
 至って健全な食事と会話だ。

 夕べの事など無かったかのように世間話が続く。


「揚げたてのコロッケって、こんなに旨いんだな」

「そうね。揚げ物はあげたてにで食べたいわよね」

 美味しいと言って食べてもらえれば、そりゃ私だって悪い気はしない。



「風呂入って来いよ」

 綺麗に平らげたお皿を見ながら一息ついていると、彼が言った。
 後になると嫌になるし、先に入ってこよう。


 お風呂の準備をするために自分の部屋のドアを開けた。

 うん?

 何か違う……


 広げたスーツケースの上に、積み重なっていた洋服達が姿を消した。
 スーツケースも閉じられ、部屋の隅に並んでいる。


 クローゼットを上げると、綺麗に洋服が掛けられていた。

 やっぱり……

引き出しを確認するのが怖い……

 怒りたい。
 だけど、何を言っても無理な気がする。


 しかも、片付けてもらったんだから、文句も言えない……
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