背中合わせからはじめましょう  ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇
 そう言えば、そろそろ冷蔵庫の中身が無くなってきた。

 そもそも、彼の両親の買った食材を消費するために、私はここにいるのだ。
 と言う事は、私はホテルに移動しなければならないんじゃないだろうか?


 あっ、この期間に、マンスリーマンションを探しておかなければいけなかったのでは?

 ご飯作って寝ころんで、アホみたいに優雅に過ごしてしまった。
 我ながら情けない……

 冷蔵庫の扉を両手で握り項垂れた。


「おい、どうかしたのか?」


 彼が近くに居たなんて気づかなかった。


「あ、冷蔵庫の扉が固くて開かないような…… アハハ」


 そんな訳ないじゃない。と、自分に突っ込む。


「そうか?」

 彼が、私の肩を軽く押しやり、冷蔵庫の扉を開けた。


「大丈夫そうだけどな。ああ、食材がもう無いんじゃないか? 買い出しに行くか?」

「えっ」

 どうして? と聞きたい。


 あの時の話は忘れてしまっているのだろうか?


「他にも必要な物があるんじゃないか? 気の利いた鍋とか、おしゃれな入れ物とか?」


 彼は、何を言っているんだろうか?

 私は、なんて答えればいいんだろう?

 確かに、あれば便利だと思ったものはあったが……


「あ…… フードプロセッサーとかジューサーが、あればなぁとは……」


「じゃあ、車出すから準備しなよ」

 彼は、出かける準備を始めた。


「う、うん」


 これで、良かったんだろうか?

 そろそろマンションを出て行かなくていいのか? 肝心な事を聞けないまま、私は彼の車に乗り込んでしまった。


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