背中合わせからはじめましょう  ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇
 バーカウンターに座り、まったりとした彼女との時間が心地良かった。

 良い雰囲気だ……
 このままマンションに帰れば、いい流れになるんじゃないかと、よからぬ想像が頭に浮かんでいた。


「いらっしゃいませ」

 バーテンダーの声に、俺の位置からは自然と客の顔が見えてしまう。


 げっ!

 なんでだよ……


 千佳子も、誰か他の男と待ち合わせでもしているのかもしれない。自分に都合のいいように考えたが……

 甘ったるい香水の匂いは、俺の横で止まった。

「悠麻さんじゃない。居るのなら連絡くれればよかったのに」


 この間、ビンタ食らったのに、連絡なんてするわけないだろう。


「こんばんは」

 無視も出来ないし、挨拶だけする。


 いい雰囲気だったのに、台無しだ。早めに帰った方が良さそうだな。


 だが、千佳子は何も言わず、当たり前のように俺の横に座った。


 どういうつもりなんだ。


「ああ、もう少し早くくれば良かったな。そしたら、私が先だったのに」

 おいおい、何を言い出す……


 これじゃまるで、俺がいつも先に居る女を相手にしているみたいじゃないか……

 何か嫌な流れになってきた。


 隣りに座る彼女も、何もしゃべらなくなってしまった。

 何を考えているんだろうか? 
 急に不安になってくる。


「いらっしゃいませ」


 バーテンダーの声に、千佳子の連れである事を願った。
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