背中合わせからはじめましょう  ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇
「どうしてだ?」


「あなたに会う為に、あの店に来たんだと思うけど」


 彼女は俺を軽蔑するように、冷ややかな目を向けた。



「俺は今夜、あんたと飲んでいたんだ。彼女達と飲むつもりはない」


「何も分かってないのね。彼女達…… あなたに本気なんだと思うけど……」


 本気?
 だとしても、今の俺にどうする事も出来ない。


「そうか?」


「あなたは、軽いつもりかもしれないけど…… 彼女達、必死だった」


「今まで、そんな素振りは見せてきた事はなかった」


「それは…… あなたに嫌われたたく無かったから我慢してきたんじゃない!」



 彼女は、何を言っているのだ?


 確かに、俺は一度もあの女達の気持ちなんて考えた事は無かった。考える必要もないし、女達も望んでないと思っていた。

 思い返せば千佳子が、ビンタした事、由美の悲しそうな顔、もしかしたら、それぞれに思いがあったのかもしれない。


 だけど、今の俺には目の前の彼女の事しか考えられない。
 後の事はどうでもよかった。

 でも彼女にしてみれば、俺が、あの女達の所に戻っても構わないという事か?

 なんだか、イライラしてくる。



「だから? 俺にあいつらの所に戻れっての?」


 そう問いただしておきながら、答えを聞くのが怖い。



 俺は、咄嗟に自分の腕に力を入れると、彼女を引き寄せていた。


 彼女の艶やかな唇が目に入った瞬間、自分の唇を重ねた。

 
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