背中合わせからはじめましょう  ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇
「ムカつく……」

キスしておきながら、俺の口からでた言葉に自分でも驚く。


「ムカついてるのは、私よ!」

 そりゃそうだろう……



「あんたの言う通り、俺は最低だ。今、分かった……」


今まで俺は、これでいいとずっと思っていた。
自分の都合のいいように会って、深入りしない付き合い。


「今? 何言ってるのよ?」


「ああ…… 何言ってんだろうな? 俺は、もう彼女達とは合わない。もう、どんな女とも……」



「突然何? そんな事を出来るわけがないでしょ? ていうか私には関係ない!」
 
 関係ないと言われて、さらに胸の奥が痛む。



「彼女達を見ても、何も思わない、感じないんだよ。俺が、抱きたいのはあんただけだ…… どうしちまったんだろうな?」



 自分でも何を言っているのかと呆れる。
もっと言いようがあるはずだ。だが、これが今の正直な思いで、それが何を意味するのか俺にも分からなかった。


「へっ? な、何言い出すのよ? 私は、嫌よ。あんたに遊ばれるのなんて!」


 遊ぶつもりなんてない。
 でも今のこの感情を、どう彼女に伝えたらいいのか分からない。そんな事、今まで誰にも思った事がなかった。


「そうだよな…… あんたが、いいって言うまでは手は出さない」



「何よそれ、さっぱり意味が分からない」


「俺にもわからないんだよ……」

 分からないんだ……

 この苛立ちが何なのか……


 彼女が俺の後を付いて来きてくれるのか不安だった。
 でも、彼女の視線に入るように、彼女の前を歩きだした。

 一緒にマンションに戻って欲しいと願いながら……



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