背中合わせからはじめましょう  ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇

 課長は、仕事も出来るし容姿だって悪くない。多分、女子社員からも慕われていると思う。今まで一度だってプライベートの誘いを受けた事はないような気がするし、他の女子社員と同じ扱いを受けてきたはずだ……


「そんなに驚かなくても……」


 課長はちょっと困ったように眉間に皺をよせた。


「こんなところで、そんな冗談言われたら驚きますよ」


「冗談じゃないんだけどな……  こんなところじゃなきゃ、君を捕まえる事出来ないしさ……」


 課長がぶつぶつ言っているのが聞こえるが、返事に困る。


「役員会の準備があるので、失礼します」


 取り合えいず逃げよう……

 頭を下げ、向きを変えた途端に、がしっと腕を掴まれた。


「一度、ちゃんと話したいんだ。食事、いいよね?」


「えっ……」



 いつもと違う課長の強引さに戸惑ってしまった。


「今まで、君には凄くやり手の彼氏が居るって噂があったから、何も出来ない気がしたけど、相手が誰だかわかったら、諦められなくなったんだ……」


 そういう物なのか?
 男の人の心理って分からない……
 困ったな……

 会議の準備もあるのに……



 困り果てていると、背後に誰かの気配を感じた。



「こちらにいらしたんですか? 常務にお渡しして頂きたい物がありまして、お探ししていたんです」

 ま、まさかその声は……
 
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