背中合わせからはじめましょう  ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇
 声のする方へ、顔を向けた。
 その途端、課長の手が私の腕からするっと離れた。

 そこには、すっと背筋を伸ばした彼が立っていた。

「あっ。席を外しておりまして申し訳ございません。」

 慌てて頭を下げる。
 正しい動きをしなくてはと、咄嗟に頭が支持を出したようだ。
 
「いえ」

 そう言った彼の目は、怖い……
 何で、睨まれなきゃならないのよ……


 でも、まあ課長の手から離れられて良かったが。


「それでは、役員フロワーの方へご案内いたします」

 私は、彼の前に出て歩き出した。


「常務へ渡すだけの資料なら、ここで構わないんじゃないか? わざわざ、役員フロワーへ行く必要があるのか?」


 課長の声と言葉に驚いて、私の足は止まってしまった。


「確かにそうですね。私はただ、この場に彼女を置いていくのが嫌なだけです」

 彼までもが、そんな発言をする。
 おい、やめて下さい……


「この際はっきり聞くが、あんたは湯之原さんとどういう関係なんだ。彼女は、付き合ってはいないと言っているが……」


 課長の声は、明らかに挑戦的だ。

 何故こうなった?
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