背中合わせからはじめましょう  ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇
えっ?

 全身が映った鏡の前で足をクロスしたまま、顔だけをドアの方へ向けた。

 そこにはドアノブを掴んだまま、目を見開いた彼が立っていた。
 思ったより、早いお帰りだ。

 ……

 しばらく彼は動かなかった。


 彼が動かないと、私も動けない。そんな空気が流れてしまっている。


 息を吹き返したように、やっと彼が口を開いた。


「何をしているんだ?」


 彼の言葉にやっと状況が把握できた。



「ひえっーー」

 慌てて両腕で胸を隠してみるが、もう遅いだろう。


「プールにでも行くのか?」


 彼は、持っていたカバンをソファーに置きながら言った。


「あっ。そう、来週グアムに行くのよ」


 私は、そう言い放つと、自分の部屋へと走って戻った。


 部屋のドアへもたれ、はあーっと大きなため息をつく。


 あー、しまった。
 パジャマがバスルームに置いたままだ。


 意を消して、部屋のドアを開けて飛び出した……

 はずだったが、バスルームから出て来た彼と、ばったり出くわしてしまった。廊下の壁と彼に阻まれて身動きが取れなくなった。


「聞いてないけど」

 目の前に立ちはだかった彼が言った。

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