背中合わせからはじめましょう  ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇
心配していた通り、目の前で、見覚えのある美人が手を振っている。


「美月! 」


私も手を上げる。


それに気づいた彼が立ち止まり、スーツケースを私の方へ差し出した。そして、軽く真紀に頭を下げた。


「気を付けて行ってこいよ」


そう言うと彼は、くるりと向きを変えた。


「あっ。ありがとう」


私も慌てて言葉を返す。


遠ざかって行く彼の背中に、ほんの、ほんの少しだけ寂しさを感じたが、そんな事を気にする間もなく、すっ飛んだ声が耳に響いた。


「何? 何何? 誰よ、あのイケメン!  一体どういう事?」


 ただでさえ大きな目を、これでもかと大きく見開いた真紀が、私の背中をバシバシと叩いている。


「うーん。話せば長くなるのよ……」


「いいわよ、時間はたっぷりあるわ。飛行機の中で聞きます」


 真紀はギロッと睨むと、漫勉な笑みを向けた。
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