背中合わせからはじめましょう  ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇
 綺麗な海も見れたし、美味しいもの食べた。ホテルのプールバーでカクテルも飲んで、おまけに滞在中天気も良く、思う存分楽しんだ。
 文句1つない、大満足の旅なのだが……


「いいんじゃない? シンプルだけど、お洒落な感じよ」

 後ろからの真紀の声に、持っていたTシャツを慌てて手から離した。

 一応、そうは言ってもお土産くらいは買ったほうがいいかと思っただけだ。
 ついでとは言っても、空港まで送ってもらったわけだし……


「ちょっと見ていただけよ。別に買うわけじゃないし」

 
 そう言って、その場を離れようとした腕をぐっとひっぱられた。


「はい、はい。取り合えず買っておけば。このブランドのシャツ、日本で売ってない物よ」


「べ、別に要らないから……」


「サイズはLでいいかな?」


「だ、誰のサイズよ。真紀の彼氏にいいんじゃない?」


「ああ、智也にはもう買ったから。勿論、空港まで送ってくれた彼よ」


 嬉しそうに鼻歌を歌う真紀は、レジまで私を引きずっていった。
 でも、手にしたシャツが、少しだけ暖かくなっていくのは気のせいだろうか。



 買い物帰り、少し夕食には早いが、海の見えるカジュアルなレストランに入った。

 細身のお洒落なグラスに注がれたビールでた乾杯する。


「ああ、もう明日は帰らなきゃだね」


 真紀が、残念そうに言う。


「ほんと、楽しかった。ねえ、真紀は智也さんと結婚とか考えているの? 結婚したら、こうして旅行に二人では来られなくなるのかな?」


 空と海がオレンジ色に染まっていく、なんとも言えない神秘的なサンセットを見ていたら、思わすそんな事が口から漏れていた。
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