背中合わせからはじめましょう  ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇
そう、それだけだ……

「えっ?」

 驚いた彼の顔が、ふっと緩んだ。


 その顔を見た瞬間、また、あのモヤモヤが浮き上がってきた。

うーっ

「ムカつくのよ!」


「なんだよ、突然」


 緩んだ彼の顔が、眉間に皺が寄りムッとなった。


「もう! わかんないのよ! 他の女は抱かないとか、私がいいって言ったら抱くとか。なんなのよ。私はどうすればいいのよ! 私は…… 私は……」


 気持ちと頭が追い付かなくて、言葉が出てこない……


 ぐっと手を握りしめると、ふっと体中が何かに包まれた。


 彼の胸の中に居るのだと気付くのにしばらくかかった。


「俺は、一生誰にも言わないと思っていた……
 でも…… 好きなんだ……」


「えっ?」


 顔を上げると、見下ろす彼の目と重なった。



「美月が、居ないと俺、ダメらしい…… よくわからないけど、ダメなんだよ…… 片付けすらする気になれなくて、この有様だ……」


 情けない目で、私に訴えてくる。


「私は…… あなたの気持ちが分からなくて、不安だった…… 多分…… 好きだからだと思う……」


 彼の腕に力がはいり、ぎゅっと抱きしめられた。


 色んなものが吹き飛んで、好き…… とだけが胸に落ちた。
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