背中合わせからはじめましょう  ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇
 胡散臭い笑顔……


 確かに、イケメンだ。スタイルもいい。スーツのセンスは文句無し。

 こりゃモテるわ……

 清潔感もあって、くせのなさそうな顔立ち。多分、頭もよく、仕事も出来るだろう。
 そう、全てそろった完璧なオーラが漂っている。


 でも、でも、でも、私はこういう完璧な男が嫌なのよ!

 こういう人には、絶対何か大きな欠点がある。しかも、このルックスで三十七歳まで独身なんて、問題あるにきまってる。

 なんか、女癖悪そうだし……

 この胡散臭い笑顔を、私は冷めた目で受け取った。



 どうしても結婚しなければならないと言うのなら、見た目はそこそこでも、穏やかで、私の言う事を聞いてくれる人がいい。

 この人は真逆だ。

 女性トラブルがスーツ着て立っているようにしか思えなくなってきた。


 はあ…… もう無理。



「噂には聞いていたが、本当に美しいお嬢様で……」

 彼の父の言葉に、慌てて笑顔を作った。


「いえいえ、仕事が忙しいようで、なかなか良いお相手に巡り合えなかったんですの…… 悠麻さんも、本当に立派な方で……ほほほっ」

 ママが、いつもよりワントーン高い声で、恥ずかしそうに答えた。

 マジか? このテンションで乗り切る気か。


「まあ、悠麻も仕事、仕事で。気づいたらこの歳。お互い仕事に追われていたなんて、これもご縁かしら?」

 彼の母も、なんだかよくわからないテンションで返してきた。


「まあまあ、詳しい話は、食事しながらでどうかな?」

 彼の父に促され、それぞれ席に着いた。

 向かいに彼が座った。

 どこを見てりゃいいのか? 誰か教えて下さい……
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