背中合わせからはじめましょう ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇
背中合わせからはじめましょう
グアムから戻って一か月。私は、実家には戻らなかった。何も言って来ない両親に、親達の罠におめおめとはまったのだと思が、もう、苛立ちはしなかった。
罠であれ、なんであれ、この生活を選んだのは自分だ。
いつものように朝のミーティングが終わると、常務の元へと向かう。
一通り今日のスケジュールを確認すると、常務の方から口を開いた。
「昼ごろ知人が来る事になっている、部屋に通してくれ」
「はい、かしこまりました」
常務が知人を呼ぶ事は、決して珍しい事ではない。
昼近くになり、エレベーターのドアが開く気配に背筋を伸ばした。
「えっ?」
顔を上げた瞬間、思わず声が漏れてしまった。
「キザキの市川です。常務とお約束させて頂いております」
乗務の知人というのは彼だったようだ。
彼は、表情一つ変えず挨拶してきた。
私も、背筋を伸ばし、仕事用の笑顔を向ける。
「伺っております。こちらへどうぞ」
彼の前に立って歩く。
役員フロアーの廊下の人影がない事を確認すると、歩く速度を落とした。
「来るなら、来るって言ってくれれば良かったのに」
少し、怒って言ってみた。
「今朝、言われたんだよ。美月が出勤した後なんだから仕方ないだろ?」
彼も、少し不貞腐れて言う。
だけど、予期せず彼の顔が見れて、嬉しくないと言ったらウソだ。それに、家じゃ見られないスーツ姿はレベルが上がって、こんな姿も悪くない。
「でも、美月の仕事姿もそそられるんだよな。あの業務スマイルを皆に見せてるんだよな。ちょっと妬けるな」
「こんな所で、何言ってんのよ!」
たまらず振り向き彼を睨む。
「あはははっ。 仲良くやっているようだな」
「会長!」
「おじい様!」
罠であれ、なんであれ、この生活を選んだのは自分だ。
いつものように朝のミーティングが終わると、常務の元へと向かう。
一通り今日のスケジュールを確認すると、常務の方から口を開いた。
「昼ごろ知人が来る事になっている、部屋に通してくれ」
「はい、かしこまりました」
常務が知人を呼ぶ事は、決して珍しい事ではない。
昼近くになり、エレベーターのドアが開く気配に背筋を伸ばした。
「えっ?」
顔を上げた瞬間、思わず声が漏れてしまった。
「キザキの市川です。常務とお約束させて頂いております」
乗務の知人というのは彼だったようだ。
彼は、表情一つ変えず挨拶してきた。
私も、背筋を伸ばし、仕事用の笑顔を向ける。
「伺っております。こちらへどうぞ」
彼の前に立って歩く。
役員フロアーの廊下の人影がない事を確認すると、歩く速度を落とした。
「来るなら、来るって言ってくれれば良かったのに」
少し、怒って言ってみた。
「今朝、言われたんだよ。美月が出勤した後なんだから仕方ないだろ?」
彼も、少し不貞腐れて言う。
だけど、予期せず彼の顔が見れて、嬉しくないと言ったらウソだ。それに、家じゃ見られないスーツ姿はレベルが上がって、こんな姿も悪くない。
「でも、美月の仕事姿もそそられるんだよな。あの業務スマイルを皆に見せてるんだよな。ちょっと妬けるな」
「こんな所で、何言ってんのよ!」
たまらず振り向き彼を睨む。
「あはははっ。 仲良くやっているようだな」
「会長!」
「おじい様!」