背中合わせからはじめましょう  ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇
 相変わらず彼との生活は、私が食事を作り、彼が掃除や片付けをやってくれる。それに関しては、お互い文句も言わないし、喧嘩もしない。
 正直、好きな事だけしていればいいのだから気楽だ。

 変わった事と言えば……

 ソファーに寝ころび、缶ビール片手にテレビを見る。この時間が一番好きだ。

 だけど……


 お風呂から出て来た彼が隣に座る。
 そこまではいい……  

 彼の手が伸びてくる気配を感じた。
 咄嗟に起き上がりクッションを胸もとで抱きしめる。

 テレビに夢中になって、気を緩めたら、簡単に彼に部屋着を脱がされてしまう。気付いたら裸なんて事も一度や二度じゃない……


 彼は伸ばして来た手を、ポンと私の頭を撫でた後、背中を私の背中に少し体重をかけるように付けてきた。
 私と彼は、ソファーの上で背中合わせに座った。


「なあ美月。お前、見合いの時、俺の事を嫌な奴だと思っていただろ? しかも、早く帰りたかっただろ?」

 彼の背中の暖かさが伝わってくる。

「えっ? やっぱり気付いた? あの時点では結構上手くやっていたつもりだけどね」

「あれでか?」

「だって胡散臭い笑顔だし。こんなにハイスペックな見た目じゃ、なんか裏があるとしか思えないじゃない? 女癖悪そうだしさ」


「結構酷い印象だな…… その通りだから仕方ないか…… まあ、見た目は良かったって事か……」

 彼は、勝手に納得して頷いている。


「あなただって、面倒臭そうな顔で見合いしていたわよ」

 私は、少し頭を後ろに倒し、彼の頭にコツンと付けた。
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