背中合わせからはじめましょう  ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇
「おまけ」背中合わせの、その先に……
 私達はお見合いをした。
 いや、見合いという罠にはめられた。
 だけど、今、幸せなのだから、それでいいはずだと思っていたのに……


 私の向いには、彼こと市川悠馬が座っている。
 彼の両脇には、彼の両親が座っており、そして、私の両脇にも私の両親が座っている。

 ここは、ホテルのレストランでもなければ、料亭でもない。
 彼と私が住んでいるマンションのリビングだ。


『明日、行くから待っていなさい』

 ママから、スマホにメッセージが届いたのは昨日の夜だ。

「ねえ、明日、ママが来るみたいだけど……」

 食事の後片付けをしている彼の方を見た。

「ああ、俺の親も来るみたいだ……」

 彼は、洗い物をする手を止めて、スマホを私の方へ向けた。

「あんまり、いい予感がしないわね」

「そうだな… 面倒くさい事にならなきゃいいがな……」

 お互い目を合わせて、ため息をついた。



 促されるまま向かい合って座ったものの、沈黙が続いている……

「いやいや、お久しぶりですね。お変わりなさそうで……」

 彼の父が、この場の雰囲気を変えるように言ったのだが……


「変わらない事が、問題なのです」

 彼の母が、父の言葉をかき消すように冷ややかに言った。

「私も、同感です」

 私の隣に座るママも、大きく頷いて言った。


「まあまあ、我々がそんな事を言ってもしょうがないだろ?」

 パパが、ママ達をなだめるようににっこり笑って、テーブルの上のお茶に手を伸ばした。


「いいえ。この際、はっきり申し上げた方がよさそうです」

「何を?」

 パパが驚いた顔を向けた。


「このお見合い、お断りさせて頂きます」


 ママが、姿勢を正して頭を下げた。
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