背中合わせからはじめましょう  ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇
 ママが切れたら、もう、どうする事も出来ない……

 パパは黙ってしまい、変わりに彼の父が口を開いた。

「まあ…… お母さん達の気持ちも分かるだろ? 若いうちの経験ならいいが、お前達も、いい年なんだから、先の事を考えてもいいんじゃないか?」

「先の事ってなんだよ?」


「結婚するか? 別れるかよ?」

 ……

 今度は、彼の母の言葉がリビングに冷たく響いた。


 彼の母も、ママも私達を見る目が怖い。


「勝手だなあ…… 無理やり騙すような見合いさせといて、こっちがその気になったら別れろとか…… 全てが思い通りになるなんて思わないでもらえるか」

「そうよ…… 私だって、仕事を続けたいし。今の生活が、充実していると思っているのよ」

 そうだ、怖がっていないで、ちゃんと言わないと。


「あまいわね…… 美月、あなた幾つになると思っているの? 子供を欲しいと思わないの?」


 うん? 子供? 私の?
 自分が子供を育てる姿を想像した。


「ママ? 私に子供なんて育てられないわよ。ムリ、ムリ」

 私は、右手を左右に振った。


「美月! いい加減にしなさい! もう、市川さんに、申し訳ないわ……」

 ママが両手で頭を押さえた。


「とんでもないです。悠馬が、無責任なんです。こちらこそ、なんてお詫びを申し上げたらよいのか?」

 なんだか知らないが、ママ達がお互いに謝り始めた。


「美月、近いうちに、荷物まとめて戻って来なさい」

「えっ。なんで?」

「これ以上、こちらにご厄介になっていても、迷惑なだけよ」


「ちょ、ちょっと待って下さい。僕たちの事は、自分達で決めるって、何度も言っているじゃないですか?」

 彼が、少し声を張った。


「自分達で決める? 私には、ただ、二人して面倒くさい事から逃げているようにしか見えないわ」

 彼の母の言葉に、私達は何も言い返せなくなった……

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