背中合わせからはじめましょう  ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇
「悠麻さんは、あの、キザキ家具のデザイナーをされているとお聞きしました。このホテルの家具も、キザキ家具のものを多く使われているようですが、悠麻さんがデザインされたものもあるのですか?」


 パパが、彼に話しかける声に、見合い中だったことを思い出した。
料理に集中してしまった……


「えっ? キザキの物だとお気付きですか?」

 彼は、意外そうにパパの顔を見た。


「まあ、一応建築家でしてね。モデルハウスややホテルなどには、キザキ家具さんの家具を使わせていただく事が多いんです。評判も良いものですから……」


 パパの表情は、家で見せる緩んだものと違い、仕事をしている時の貫禄ある目をしていた。


「ありがとうございます。なかなか、何処の家具かまで気づいて頂ける事は少ないもので、驚きました」


「この、椅子とテーブルもキザキ家具さんの物では?」


「ええ。私のデザインしたものです」

 
「やはり! 本当に素晴らしい……」

 パパの目は、本当に感心しているようだ。


「いえいえ、このホテルの営業部長が、義理の兄なので、声をかけてもらっているだけですよ」


 彼は、控えめな笑みを見せた。


 パパと彼が、仕事の話に盛り上がっているようだ。


 このまま黙っていれば、私に話を振られる事はないかもしれない。
 静かにしてよう……と、思っているのに、彼の母が、彼の肘を突いた。
< 21 / 213 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop