背中合わせからはじめましょう  ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇
 こんなバカな話ってあるのだろうか?

 見合いして、その相手と二人ホテルの部屋に閉じ込められたわけだ。しかも、両親にはめられた。

 二人黙ったままソファーに座る。きっと彼も同じ事を考えているのだろう。


 そして、先に口を開いたのは彼だった。


 「あんたの親、どういう考えしてんだよ? 普通、娘を男のいる部屋に残したりするか?」


 今までの紳士的な声とは違う、呆れたような目をして言う彼にイラっとした。
 私だって、どういう親なのかと腹立つが、人に言われるとやっぱりムカつく。
 それに、やっぱり、今までの笑みは作り物だったのだと確信した。


「はあ? うちの親の問題だけじゃなでしょ? この部屋用意したのは、あなたのお父様じゃなくて? それに、兄弟までグルになって、こんなの監禁よ! 訴えてやるわ!」


 彼だって被害者のようなものかもしれないが、あまりに一歩的な発言に黙ってなどいられない。

「訴えたいのはこっちだって同じだ! 俺は何も知らん!」


「男のくせに無責任じゃないの! だいたい、その気もないのに、なんで見合いなんてするのよ!」


 自分の事は棚に上げて言える筋合いじゃない事は分かっている。


「あんただって、同じだろ? 見合いぐらい断れよ!」


「はあ? あんたこそ、三十七にもなって見合いって? 今まで何をやっていたのよ! 女と遊んでるからこんな事になるのよ!」


「お前に言われたくはない! 俺は、そもそも結婚なんてするつもりなんて無い!」

 彼が吐き捨てるように言った。

 
「あらそう? お生憎様。私も、結婚なんてする気ないの!」


 私は、クルリと彼に背を向けて座った。

 彼も私に背を向けたのが分かった。



 思わず感情をむき出しにしてしまった。

 だから嫌なんだ、人に気持ちをぶつけてしまう事が……


 これから、どうしらいいか分からない。
 どう、声をかければいいかもわからない……
 
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