背中合わせからはじめましょう  ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇
 今までこうなるのが嫌で、人前での自分を作ってきた。
 表面的に交わしていれば、深く傷つく事もなければ、傷つける事もない。
 全て穏便に過ぎていく、それでいいと思ってきた。

 だから、本当の事を言われたり、言ってはいけない事を言ってしまった時、どうしたらいいのか?分からなくなってしまう。


 彼に背けられた、背中が痛い。



 痛い?


 背中と思っていたが、なんだか、胃のあたりが痛い……

 なんだか苦しくなってきた……
 やばい、マジで苦しい……


「うっ…… ううっ……」

 とうとう、ソファーの上に横たわってしまった。



「えっ? お、おい、どうした?」

 異変に気付いた彼が、近づいてきた。


「く、苦しい……」


「マジか? 顔が真っ青じゃないか! ちょ、ちょっと待ってろ」



 彼が、慌ててソファーの横の受話器を掴んだ。


「彼女が、苦しがってる救急車を頼む!」


 彼の緊迫した声が部屋に響いた。


「えっ? あっ、康介さん…… 彼女が苦しがってるんだ。本当だ!」


「はっ? ああ、分かった……」


 彼の電話のやり取りが、遠くなっていく……
< 42 / 213 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop