背中合わせからはじめましょう  ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇
 彼は、リビングのソファーに座わり、英字新聞を広げていた。
気配に気づき顔を上げたが、チラリと私を見ると目を逸らせてしまった。


 バスローブだけという状況は始めてで、股がすうすうして落ち着かない。
 太ももあたりを押さえたいが不自然な気がして、何でもないふりでソファーに腰をおろした。


「適当で構わない。俺の分もルームサービス頼んでおいてくれ」


 彼はそう言って、私には目も向けずバスルームへ向かった。

 彼も、お風呂に入るみたいだ……



 テーブルの上の高級そうなメニューを開くと、なんだかワクワクして来た。


 タブレットで頼む事も出来るらしい。
 彼がどのくらい食べるのか知らないが、食べたい物をオーダーする手がリズムよくスライドする。


 オーダーが終わり、顔を上げると向かいのソファーの上にききちんと畳んである着物が目に入った。


 えっ?
 誰が畳んだの? 

 着物だけでなく肌襦袢もきちんと畳まれ、足袋や紐、下着までもまとめられている。

 この部屋には彼しかいない……


 彼が?



 そう思うと、顔がカーっと熱くなった。
 忘れかけていたのに、触れられた胸の感触が蘇ってきた。
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