背中合わせからはじめましょう  ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇
 ガタガタと音がして、彼がバスルームから出てきた。

 彼も、バスローブ姿だった。
 彼も汗をかいたのだろうか?


 チラリと彼を見てしまう。


 彼もバスローブだけを羽織っているのだろうか? 
 男の人はすうすうしないのかと、つい目線が行きそうになり慌てて反対側へ目を向けた。



「あ、あの、着物をたたんでくださったんですか?」


「ああ……」


 彼は、バーカウンターの奥にある冷蔵庫から、ミネラルウォーターのボトルを出した。


「着物をたためるなんて凄いですね?」


「いや、動画を見て真似しただけだ。服が散らかっていると気になる。勝手に悪かった」



 どうも彼は几帳面のようだ。

 自分の部屋が頭をよぎり、彼には見せられないと首を竦めた。



 彼は、私の目の前にミネラルウォーターのボトルを差し出すと、ソファーに座りミネラルウォーターのキャップを開けた。
 


「あ、ありがとうございます」

 着物とミネラルウォーター、両方のお礼を言ったつもりだ。



 バスローブ姿でソファーに向き合って座ると、何処に目を向けていいのか分からず大きな窓を見る事にした。


 彼は、何処を見ているのだろうかと、目だけを動かして見た。

 彼も、窓の外を見ていた。

 今は、窓の外を見ているのが正しいようだ。


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