背中合わせからはじめましょう  ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇
 彼が、ワインクーラーからワインを取り出した。慣れた手つきでコルクを開ける。


「飲むか?」


「あっ。はい」

 そりゃ飲みたいですよ。正直、飲まなきゃやっていられない。


 彼が、グラスに赤ワインを注いでくれる。
 
 なんかグラスを交わすのもおかしな気がして、「いただきます」と言って、ワイングラスを口に運んだ。


「美味しい」


 思わず、口元が緩んでしまった。


 改めて、ダイニングテーブルに並ぶ料理を眺める。

 料理も確かに素晴らしい…… 

 でも、このダイニングテーブルとイスが、気持ちを優雅にさせてくれる気がする。
 椅子には肘置きがあり、ふと力を抜いた瞬間、身体を包むように支えてもらっているような気分になった。


 サーモンのマリネを取り分けようと、手を伸ばすより早く、彼の手が一瞬早く動いた。


「腹減ってんだろ? 先に食べろ」


 そう言うと、ローストビーフやパスタまでも、手早く取り分けてくれた。
 テキパキと無駄の動きがない。

 お腹が空いて、倒れてしまいそうな私は、遠慮なく頂く事にした。


「あーっ。 柔らかい~ 美味しい」


 私は、ローストビーフを口に入れると、思わず声を上げてしまった。

 チラリと見た彼の目じりが、一瞬下がった気がする。
 気のせいだとは思うが……
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