背中合わせからはじめましょう  ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇
日も落ちて部屋の中が暗くなった時、机の上のスマホが鳴った。

「もしもし」

「あ、悠麻? どこにいるの?」

 今は聞きたくない母親の声だ。


「何処って、家だよ」

「そう、美月さんは?」

「は? 知らねえよ」

「あんた、家まで送らなかったの?」

「あのな? 勝手にあんな所に閉じ込めやがって、どうかしてるぞ! 分かっているのか?」


「美月さん、良い方でしょ?」

母親の呑気な声にイラっと来る。


「そういう問題じゃない!」


「あちらのお家に、ご挨拶の連絡をしなくちゃいけないわね」


 俺は黙って電話を切った。


 俺は、はじめから見合いなどするつもりもなかったし、当然断るつもりでいた。


 だけど……

 何故か、すぐに断る事をためらってしまった。



 なんだかモヤモヤする。


 じっとしていても仕方ない、クローゼットから適当に普段着ているものを取り出した。
 サッと着替えを済ませると、行きつけのバーへと足を向けた。
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