約束 ~幼馴染みの甘い執愛~
いくら幼馴染みとは言え、異性の親に会いたいというのだから、本来は事前に都合を確認するのが筋だ。雪哉がそれをしなかったのは、言えば愛梨は恋人に相談してしまうから。相談したら、ダメだと言われるに決まっているから。
だから事前のやり取りの時は、不自然なほどに簡潔であっさりした内容だった。目的を悟らせないために。恋人に邪魔されずに愛梨の両親に再会して、愛梨と両親に、ちゃんと自分の存在を印象付けるために。
「ユキはすぐ嘘つくの?」
潤んだ瞳で問い掛けられ、色んな感情がぐらぐらと揺れ動いた。必死に煩悩を追い出しながら、やっとの思いで『つかないよ』と呟いたが、3秒後には自分の言葉を自分で打ち破りそうになって相当焦った。
くるくると変わる表情を見ているのが楽しい。ふと大人の女性らしい仕草をするので、思わず息を飲む。さらけ出された首筋や鎖骨に、視線が奪われる。
これが全て自分のものではなく、彼氏が独占しているものなのかと思うと、沸々と嫉妬の感情が渦を巻く。名字で呼ばれた時と同じ、どうしようもない不快感が平常心を苛む。細い首筋に唇を寄せて、無理にでも自分に振り向かせたい……狂おしい衝動が脳と心臓を焼いていく。
けれどそれを表に出すと愛梨が怯えてしまうので、どうにかして押さえ込んだ。