約束 ~幼馴染みの甘い執愛~
「それは、恋人同士の秘密でしょ」
その手を退けて欲しくて咄嗟に振り払おうとするが、意外にも雪哉の腕は力強い。
どこまで、なんて問われても言うはずがない。キスと同じ、恋人でもなんでもない雪哉に、全てを教える必要なんてないから。
「そういうのは他人に話す事じゃないから」
「……流石に、腹が立つな」
早く納得して、早く気が済んで、と思っていたのに。耳に響いた声はまたしても低く不機嫌なものに変貌している。しかも今度は台詞まで、不機嫌というより怒りそのもの。
敬語だったわけでも、名字で呼んだわけでもない。邪険にしたのは申し訳ないが、そこまで赤裸々に語る必要性も感じない。別に怒らなくても。
そう思ったところまでだった。
まともに思考が働いていられたのは。
「もう我慢出来ない。――愛梨に他人扱いされるのも、俺が眼中にないのも」
「ユキ…?……ん、っ…!?」
くい、と顎を持ち上げられ、強引に目線を合わせられた。眼前に整った雪哉の顔が迫り、驚いたのはその一瞬あと。抗議の声を上げようと僅かに開いた口は、近付いた雪哉の唇に無理矢理塞がれた。
「っ……!!」
唇が重なった一瞬の後、距離が更に近付いて、下唇を噛まれた。さほど力は込められておらず、痛みは感じない。けれど触れ合った唇の柔らかさが、確かにキスをされているのだと教えてくれた。
驚いて目を見開くと、薄く開けられていた黒い瞳とゼロ距離のまま視線が絡んだ。