約束 ~幼馴染みの甘い執愛~
「っふ、…」
「愛梨」
目が合うと雪哉の唇が離れていったので、一度絶たれた思考を何とか再接続しようとした。けれど耳の奥に名を呼ぶ声が届いた直後、再び唇を重ねられてしまい結局修復は間に合わない。
「っん、ッ…」
呼吸が出来ない事に焦って口を開くと、そこから雪哉の舌が侵入してきた。普段感じることのない温度に、びくっと身体が跳ねる。
驚きでそのまま身体が硬直しても、侵攻は止まらない。最初に触れた唇は柔らかかったが、侵入してきた舌は暴力的ですらあった。熱い舌を絡められ、触れていない場所を全て埋めるように攻められ、徐々に身体の力が抜けていく。
手にしていた資料が、ヒラリと舞い落ちた。数枚の紙が別の所に散らばって零れた気がしたが、どこに落ちたのかまで確認している心の余裕などない。
「ん、…っんぅ」
舌の侵入に抵抗するため首を動かそうとしたが、顎に添えられていた雪哉の指先に強引に顔の角度を変えられ、更に深く口付けられる。くちゅ、と唾液が絡む水の音がして、そのまま舌を食べられてしまうのではないかと焦った。
顎の下の指先が首筋を辿り、下へゆっくりと降りていく。ブラウスの上から鎖骨を撫でられると、もう1度身体がびくりと反応し、その直後に上半身にだけ力が戻って来た。
「っや! ……ユキ! やだっ!」
力が戻った腕を動かし、雪哉と自分の身体の間に腕を織り込むと、その勢いのまま腕を伸ばして身体を引き離す。無理矢理引き離された雪哉はキスの余韻を残した細い目で、愛梨をじっと見つめてきた。