約束 ~幼馴染みの甘い執愛~
「な、んで…?」
その視線に強烈な色気と恐怖を感じてしまい、思わず目を逸らす。だが視線からは逃げても口からはちゃんと非難の言葉が出てきた。
「なんでこんな酷いことするの!?」
「……酷い事してるのは、愛梨の方だ」
けれど雪哉には動じる様子もない。
雪哉は濡れた唇を指の背で拭うと、離れた愛梨に近付いて再び身体を引き寄せる。今度は乱暴なキスではない。肩を抱き寄せると、耳元に唇が近付く。そして言い聞かせるように囁かれる。
「いい加減、俺のこと『男』として意識して」
「……は…? な…、なに…」
「愛梨にキスしたいと思ってるって、彼氏に嫉妬してるって、『ちゃんと』理解して」
少し掠れた声で、甘える子供のように呟かれる。耳元で喋られると髪が短いせいで遮るところのない首筋が、ぞくっと痺れたような気がした。
言葉と力を失い、その場に崩れ落ちそうになっていた身体を急に押された。バランスを失った身体は、資料がぎっしりと収められた棚に簡単に縫い付けられてしまう。驚いて目を見開くと、再び距離を詰めてきた雪哉が棚に腕を付いて、愛梨の逃げ道を奪い取った。そのまま至近距離まで顔を近付けられ、指先に荒々しく唇を撫でられる。
「理解できないなら、もう1回する」
「やめて!」
恐怖と驚愕で力が抜けた身体は、背中に支えがあっても徐々にずり落ちて来る。
慌てて足に力を込めるが、背中には棚が、眼前には獲物を追い詰めたような目をした雪哉が立ち塞がり、体勢を立て直すことすら適わない。横から抜けようと思った行動は直前に見破られ、雪哉の左手は逃がすまいと愛梨の右手を捕らえた。
「こ、こんなの、浮気だよ…。なんで…」
「そうだよ」